よぎちょぎで「出会った」人々

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ノサモチングよ!とアジョシは叫んだ

百済時代の山城が郊外の山の上にあると聞いて
清州(チョンジュ)という町を訪れた。
上党山城(サンダンサンソン")と呼ばれている
万里の長城風の城壁を登ってみようというわけだ。

車や路線バスでも行けるのに、全長4.2キロということで少々ナメてかかったのがまずかった。

規模は小さいが城壁にいたるまでの勾配のきつさや起伏の多さはちょっとした山登り並みの体力が必要で、ここに比べたら世界遺産の水原華城などは‘公園’と表現してもいいぐらいだ。

登山道を入ってから城壁まで一時間半。

困ったことに頂上の城壁を歩いていたら体調が悪くなってしまった。不整脈がひどく、炎天下だというのに冷や汗が止まらない。
こんなところで万一倒れたとしたら、と考えるとつくづく不安になった。

ふと下を見ると年配のアジョシ(男性)がふたり見えたので、登ってくるを待って窮状を訴えてみた。職場の上司と部下の関係らしく、山歩きには慣れている様子だ。

上司風のアジョシはしばらく考えていたが、「自分たちはこれから自家用車を置いてある駐車場に向かうので一緒に来てはどうか。市内まで送ってあげよう」と言ってくれたのでついて行くことにした。

城壁の内側は集落になっていて食事や土産物を売る店がある。
アジョシたちはそのなかの一軒に入り、仕込みをしているアジュンマに挨拶をしている。どうやら顔なじみのようだ。

ピョンサンという大きな縁台の上に座ると、器になみなみ注がれたマッコリとチヂミが出された。

冷えたマッコリをチビチビやりながら日陰で手足を伸ばしているとだいぶ気分が良くなってきた。

上司風アジョシのリュックサックに大きな缶バッヂがふたつ、並べて付けられているのに気づいた。

「盧武鉉(ノ・ムヒョン)」という大統領候補者が子どもに囲まれながら微笑んでいる絵柄だ。

アジョシが「この方を知っているのか?」と聞く。

「もちろん!ノ・ムヒョン先生は元弁護士で、とても立派な方だと聞いています」

力をこめて答えるとアジョシは思いがけないほど感動し、私の両手を取って「おー!日本のノサモチングよ!」と叫んだ。
そして缶バッヂのひとつを外して私に下さるのだった。

「ノサモ」とはノ・ムヒョン氏の支持団体で、韓国語の「盧武鉉を・愛する・会」の頭文字を取った略称だ。
チングは「友達」の意味だから、私はノ・ムヒョン氏の熱烈なファンと認められたわけだ。

たまたまニュース報道で見た知識だけなのだが、アジョシと私はノサモチングとして意気投合し、下山後は清州の観光地を車で案内していただいたり、夕食をご馳走していただいたり、とすっかりお世話になってしまった。

圧倒的な支持を集めて大統領に当選したノ・ムヒョン氏だが、退任後は不正献金疑惑にからむ投身自殺というショッキングな最期を遂げた。

ニュースを知って私が真っ先に思い出したのは、上党山城で出会ったノサモチングのアジョシであった。



住所忠清北道 清州