よぎちょぎ「あせった、困った」

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ピンクに輝く迷い道

水原(スォン)駅の観光案内所に入り
「静かなモーテル」という条件で宿を紹介してもらった。
ガイドさんがえらんでくれた宿は駅前の繁華街を抜けたところの、
寂れきった商店街の真ん中にあった。

昼間だというのに周辺のほとんどの店のシャッターは閉ざされてシーンと静まり返っている。

まあ寝るためだけに帰る宿なので寂れているのはいっこうに構わない。韓国には珍しく、木を多く使った内装でおしゃれなのも気に入った。

荷物を置き、水原観光のハイライト、世界遺産の水原華城(スウォンファソン)に出かけることにしした。いわば韓国版の万里の長城だ。

スタート地点の八達門(パッタルムン)から急な石段を登り、城壁にたどり着いたらあとは曲がりくねった城壁に沿って行けばよい。

だがここで失敗をやらかした。
城壁に上る道をまちがえて、近くのお寺に迷い込んでしまったのだ。

やさしい住職さんから正しい道を教わり、「おやつに食べなさい」と大きなバナナを下さったのをありがたく頂戴して華城へ向かった。

城壁の長さはおよそ5キロ。
途中に点在する楼門や砲台を見物しながらゆったり、ふつうなら2時間もあれば十分なところを、写真を撮りながら4時間かけて歩いた。

夕食は地元の友人を呼び出して名物のカルビを味わう。
サッカー競技場の前にある、その名も「ワールドカップカルビ」だ。

肉の幅が普通の骨付きカルビの2倍あるそうで、さすがにデカい。
仕上げに冷麺をすすったら動けなくなった。

水原の街を堪能しきったあと、宿までは友人が車で送ってくれることになったが、道が一方通行ということで不慣れな土地ををぐるぐる走り回る羽目になってしまった。

やがて車は、ナビが「ここだ」と表示するひときわ明るい路地へ入る。

昼間はお寺の坊さんが「正しき道」を示してくださったが、今はナビだけが頼りなのであった。

道の両脇には透明なガラス戸の店がずらりと並び、派手なピンクの明かりが灯っている。
だが看板はないし景気の良い音楽も聞こえず、奇妙に静かなのが不気味だ。

それぞれの店の前では真っ白いメイクをした女たちが前を通りかかる車や人に、無表情で「おいでおいで」をしていた。

ヘソ出しタンクトップ姿で、パンツに包まれた足が異様に長い。
30センチ以上もありそうな厚底サンダルを履いているからだ。

なんだか悪い夢でも見ているような奇怪な光景に背筋がゾッとした。
これなら歌舞伎町の喧噪の方がはるかに人間的だ。

ようするに宿の周囲は「飾り窓のオンナ」が客を待つ売春街であったのだ。
昼間、「静かだな」と思ったのは店が閉まっていたからで、夜になって一斉に開店したものだから町のイメージが一変してしまったわけだ。

宿にはたどりつけたものの、その晩は酔客が一晩中出入りする騒音と、真っ白い顔の女が「おいでおいで」をする夢に悩まされる一夜となってしまった。


住所京幾道 水原