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黒いピラミッド、ワンヌーンへ

韓国にもピラミッドがあるという。
「これはぜひ見に行かなくちゃっ」とバスに飛び乗った。
ソウルからバスで3時間余りの山清(サンチョン)という田舎町は
その名の通り「山高く水清く」、空気までが青く透き通っていた。

何だか信州の安曇野を思わせる田園風景が広がっているので私はすっかりうれしくなってしまった。

ここからピラミッドに行くには交通機関がないので、町を子犬のように走り回っている黄色いタクシーをチャーターすることになる。

20年ほど前にここへ行った人の本を読むと…

「警察や軍隊のお世話にならないとたどり着けない大秘境」「タクシーの運転手すら迷子になる」などとあるので心細くてしょうがない。

ちなみに「ワンヌーン」とは漢字の王陵(ワンヌン)のこと。

果たしてタクシーで行くことはできるのか?
たとえ行けたとしても法外な料金を要求されるのではないか?

運ちゃんの顔色を伺いつつ「昔の王様のお墓へ行きたいんですが」と頼む。

彼は思いがけないほど愛想よく「ああ、ワンヌーン!」と言って私を乗せ、きれいに舗装された道を山に向かってビュンビュン走らせ始めた。

運ちゃんの「ワンヌーン!」の発音が英語の「アフタヌーン!」に似ていたなぁ、などと、どうでもよいことを考えているうちにも眼下の街並みはどんどん小さくなっていく。

「このままだと軍隊も警察も出番がないぞ」と思ったら15分ほどでアッという間に目的地に着いてしまったのには驚いた。

山の斜面には、大きな黒い石が階段状に積み上げられている。

まさに「黒いピラミッド」といった異様な雰囲気でなかなかの迫力だ。
6世紀中頃、新羅に滅ぼされた伽耶国最後の王、九衡(クヒョン)の墓だろうと伝えられている。

韓国のお墓といえばおわんを伏せたような土饅頭型が有名だが、この王陵のように自然石を積み上げた古墳で、しかもこれほど大きなものは世界でもここにしかないらしい。

王陵の正面には石塔と、学者や武人の石像が両側に置かれている。

だが事前に調べた本に載っていた写真とはどこか違う。何かが足りないような気がするのだ。

「はて、なんだろう?」

タクシーを待たせている駐車場に下ってきて理由がわかった。

写真には学者や武人の石像とともに、狛犬なのか獅子のような動物の石像が一対、王陵の守護神のように座ってはずのだ。

その石像がなぜかこの駐車場の朱塗りの鳥居のように見える(紅門というらしい)門の両脇に移動されていた。
これでは守護神というよりは門番だ。

狛犬クンもさぞや不本意だろうなぁ。



住所慶尚南道 山清