よぎちょぎ「来て、見て、知った」

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黒薔薇、参上!

知り合いの大学生、ソンヒョン君の誕生パーティに
私も連れて行ってもらえることになった。
青い照明に満たされたお洒落な雰囲気のパブで
ソファに座ると大きなピッチャーでビールが運ばれた。

続いて「アムゴナ(よりどり)」という盛り合わせ料理。
こちらは唐揚げ、ポテトフライ、イカ炒め、林檎サラダなどが大皿にすごいボリュームでどどっと盛られている。

急に店内の照明が落とされ「HAPPY BirthDay」の曲が流れはじめた。

どうやら幹事のヨンス君という青年があらかじめ店の人に頼んでおいたらしい。
ローソクに火を点して歌い始めると周囲の客たちも会話を中断して一緒に手拍子してくれるではないか。

ヨンス君がケーキを少しずつ切り分けては店内のテーブルに配る。

見知らぬ女の子が「チュッカハムニダ!(おめでとう)」と言いながらビールの入ったピッチャーを持って来た。
ソンヒョン君、うれしそうに一気に飲み干したが大変なのはその後だった。

次々に違う客が酒を持って現れるのであまり酒に強くないソンヒョン君はたちまちフラフラになってしまった。

そんな彼に「女の酒は飲んでもオレの酒は飲めないのか!」と、詰め寄るひとりの男性客がいた。

祝いの酒を断るわけにもいかず途方に暮れるソンヒョン君の姿に「どうなることか…」と見守っていると、すぐ隣のテーブルで飲んでいた若い女性が「フッチャンミ」の名乗りを挙げた。

韓国の若い人の間で、一気飲みの代役を女性がつとめる時には「黒薔薇(フッチャンミ)」、男性なら「黒い騎士(フッキサ)」と呼ぶのだそうな。

ジーパン姿の「黒薔薇」は背が高くシャープな顔立ちの美人だ。

ソンヒョン君の手からピッチャーを取り上げると、グイグイと見事な飲みっぷりで一気に飲み干してしまった。

店内から湧き上がる拍手と感嘆の声を受けながら、彼女はさっさと自分の席に戻っていく。

「ふうーん、カッコ良い!」

鮮やかな飲みっぷりにひたすら感心していると美しき黒薔薇がソンヒョン君に何やら言いつけた。

窮地を救われた人は相手の黒薔薇もしくは黒騎士の言うことをなんでも聞かねばならないルールなのだという。

希望を伝えられたソンヒョン君が私たちのテーブルの上にあった料理の大皿をそそくさと彼女のテーブルに持って行く。勿論こちらのメンバーに不平を言うものはいない。

しばらくして、やや小ぶりの皿に盛りつけしなおされた料理がこちらのテーブルに戻されてきた。
すべて取り上げては気の毒と思った黒薔薇が気を利かせてくれたらしい。

「友だちの友だちは友だち」を地でいくのが韓国人だといった知人がいるが、彼らにとってはこうしたやり取りそのものがコミュニケーションの一種であり「遊び」なのだろう。

なんだか素敵なものを見せてもらったなぁ。



住所全羅北道 全州