よぎちょぎ「来て、見て、知った」

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植物園でモデル気分

韓国の最南端にある済州島は気候が温暖で
「韓国のハワイ」などと呼ばれているが、
実際には冬ともなると強い風がふきまくり降雪もある。
地下鉄はないので路線バスを使わざるをえないが…

そのたびに吹きさらしの停留所で待つのがだんだん苦痛になってしまった。

こんな日にまったり過ごせる場所は、「そうだ、植物園だ!」と思いつき、済州観光植物園「如美地(ヨミジと読む)」に出かけていった。

年間140万名の観光客が訪れるという「東洋最大の人工室内植物園」だ。

熱帯植物の温室ならばきっと快適な‘蒸し暑さ’を堪能できるだろう。我ながらかなり気の利いた思いつきではないか。

6000ウォンの入場料を払って入ると、中央ホールを囲むように花蝶園、水生園、多肉園、熱帯生態系、熱帯果樹園、といった具合に温室が並ぶ。

家族連れやカップルがたくさん訪れ、レストランや売店は人であふれていた。

思っていた通り中はポカポカ温かい。
珍しい植物をながめながら美しく整備された温室内を歩きまわっていると外の寒さを忘れてしまいそうだ。

だがしばらくして気づいた。

ここでは南国の植物や椰子の木を背景に写真を撮っている人が異様に多いのだ。

植物を、ではない。
家族連れも恋人たちも、うれしそうにお互いを撮り合っている。あきれたことにモデル気取りでポーズをつけ、プロカメラマンに撮らせている新婚カップルもいる。

水生植物を見ようと、川の流れに目を凝らしていると後ろから突き飛ばされた。
「なんだなんだ?」と振り返るとカメラを持ったオヤジが「邪魔だからどけ!」と手を振っている。

きれいな植物の周りではヒトビトが撮影の順番を待っているし、フレームに写り込まぬよう注意深く歩かねばならないので少々グッタリしてきた。

写真を撮るのも撮られるのも大好きな国民性の前に、南国の珍しい植物を集めた植物園がじわじわと撮影スタジオ化してしまう、というのはしょうがないと思う。

だがこのヨミジ植物園は、はじめから写真撮影の‘背景’となるのを想定して造られているのに私は気づいてしまったのだ。

椰子の木の周りには可愛い小道が造られ、いたるところに‘撮影用’のステージやベンチがあり、ゴリラの人形などが置かれている。

主役の植物たちは観察対象というよりも、写真の背景として使えるよう‘見映えよく’植えられているようなのである。

感心しながらも半ば呆れて植物園を後にした私は雪の降りしきる中をバス停に向かった。



住所済州島 中文観光団地