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ナメキンで行く絶海の孤島

木浦から西南へ115キロ、韓国の最西端に
奇岩に囲まれた孤島がある。「紅島(ホンド)」だ。
島全体が手つかずの大自然であり、
天然記念物に指定されているので…

この島では石ころひとつ持ち出しは許されない。
すごいところなのだ。

名前の由来は「赤みを帯びた岩でできた島だから」、「夕日の時に島全体が赤く見えるから」などと言われている。

島に向かうフェリーの名は「南海クィーン」だが、韓国語の発音だと「ナメキン」と聞こえてしまい、なんだかデメキンの親類のような名前になってしまうのだった。

この「ナメキン」に乗ること2時間半。激しく揺れる航海は決して楽ではない。

船体は波頭を飛び越えながらものすごい勢いで沖を目指して突き進む。

こんなに海が荒れているのだから「もう少しゆっくり慎重に運航してもいいんだよ」と言ってあげたいがナメキンにその気はないらしい。

乗客は座席にしがみつき、船酔いと戦いながらひたすら航海の無事を神に祈って…いないので困ってしまうのだ。

揺れにあわせてピョンピョン飛び上がって遊ぶアジョシがいるかと思えば、売店で熱湯を入れてもらったカップ麺を持ったまま「ひゃぁひゃぁ」言いながら歩き回るアジョシがいる。

なぜ今、あえてカップ麺を食べなくてはならないのか。歩き回らずにさっさその辺に座って食べるわけには行かないのか?
韓国アジョシの行動はわからない。

そういうわからない人が何人もウロウロするので熱湯をこぼされそうでハラハラする。

かと思うと2階から階段で足を滑らせて落ちてくる人もいる。脳震盪を起こしたのか、痛くて立てないのか、階段の下に数人がゴロゴロ転がっている。
このヒトビトも何がしたいのかさっぱりわからないのである。

謎とスリルに満ちた航海を終え、ナメキンが船着場に着くと待機していた客寄せのアジュンマがどっと群がってきた。

船を降りたヒトビトはそれらのアジュンマに引っ張られながらあっという間にそれぞれの民宿や食堂に消えていった。

私はナメキンの船室で知り合った人のよさそうなハルモニ(お婆ちゃん)の家に泊めてもらうことになっていた。

ハルモニは刺身屋、釣り道具屋などが並ぶ島のメインストリート(?)をおどろくほどの早さで上っていくのであっという間に姿を見失ってしまった。

道はどんどん狭くなり、200メートルほど行くとなくなってしまった。
そしてそこがハルモニの家なのであった。

道に迷うヒマもないちっぽけな集落なのだ。
島には自動車が一台も走っていないようだが、これではたしかに必要ないわなぁと納得する。

気の早いハルモニはさっさと家に入ってしまったようで、私も入ろうと思ったが家の前には岩海苔を貼り付けたスダレが一面に並べられていて足の踏み場もない。

ハルモニはどうやってこの庭を横切ったのだろう?

そういえばこのあたりの海域は海苔の産地として有名であったっけなぁ、とぼんやり思い出す。

海苔を踏まないよう小柄な身体でぴょんぴょんとスダレのあいだを渡っていくハルモニの姿が目に浮かんだ。



住所全羅南道 紅島