ナグネのバックパック旅行術

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街歩きの味方

ソウルで信号待ちの時など急に話しかけられることがある。
OL風のきりっとしたお姉さんに早口で何か言われ、
キャッチセールスと勘違いする人もいるようだが、
その女性はあなたに道を尋ねているのだ。

「モルラヨ(知りません)」と言うと、さっと身をひるがえして他へ聞きに行く。

私の次に声をかけたのが、隣で地図を見ていた白人男性だったこともあったりで、どうやら韓国人というのは相手を観察してひるんだり遠慮したりは、あまりしないようだ。

まぁそんな調子だから、こちらが道を尋ねる場合にも遠慮は無用だ。
しかも韓国人には親切な人が多い。


もちろんそうじゃない人がいるのは認めるが、もしも「親切度」というような尺度で計ったとしたら、韓国人の平均値は日本人のぐッと上をいくのは間違いないのだ。

私の定宿は、流し台やバスルームの部品を扱う工事店が並ぶ下町の一角にある。
うっかり地下鉄の出口を間違えると道がわからなくなってしまい、恥ずかしいがリュックから地図を出して調べることになる。

そういう時はたいがい店先で「ああ、もーヒマでヒマで…」といった顔つきでぼーっとしていたアジョシが私を見つけて近づいてくる。

すかさずもう2人がうれしそうにやって来て、あっという間に3人のオジサンに囲まれてしまったことがある。

オジサンたちは私の手から案内図を取り上げると熱心に議論をはじめた。

やがて結論が出たのか「ついて来い」と手招きし、ホテルの玄関まで連れて行ってくれたのだった。

不案内な土地で「ちょっと道でも聞こう」と適当な店に入るのはよくあることだが、韓国では「ちょっと」のつもりが意外な展開になったりする。

モーテルのフロントのアジュンマに「焼き肉が食べたいんだけど美味しい店は…?」と尋ねたら、なんと彼女はいきなりフロントの入り口に鍵をかけ、先だって歩き始めたではないか。

その表情には、特別なことをしてあげるんだよといった気配はまったくなかった。

道を尋ねたおもちゃ屋のご主人は、店内にいた子どもたちを帰らせ、シャッターをおろして自ら案内役をしてくださった。

こういうことが韓国を旅しているとけっこうあるのだ。

「案内されて行った先が怪しげな店だったりはないの?」と聞かれれば「そういうこともあるらしい」と答えるしかないが、今のところ経験はない。

日本人から見ると無愛想な印象の韓国人だが、こうした普通の人の親切のおかげで私の旅は快適に続けていられる。