travel 「東洋のハワイ」で吹雪に遭遇


吹雪が止み、つかの間の穏やかさを取り戻したモスルポの町。歩道も車道も凍りついて人影はほとんどない。



特産品である蜜柑が島のいたるところでなっている。この蜜柑の100%果汁「濟州島ミルクァン」は濃いのに味がまろやかで私のお気に入りだ。
蜜柑の原産は韓国だそうな。



■ソウルでは異例の寒波が押し寄せ-10℃を下回るといわれていた頃、私は「東洋のハワイ」と言われる濟州島にいた。知り合いの誰しもが「あそこなら暖かいよ」と言ったはずの…。

濟州空港には雪まじりの風が吹きすさび、ハワイというよりは津軽海峡冬景色といったかんじだ。その中で椰子に似たビンロウジュの高木がうなだれたまま風になぶられている。

バスを乗り継ぎ、島の最南端にあるモスルポという港町に着いた。容赦なく吹きつける風に顔の感覚が麻痺しかけた頃、町でたった一軒のホテル「第一荘」に部屋を取ることができた。

■濟州島は「三無の島」「三多の島」として有名だ。
三無は「門、乞食、泥棒」、一方の三多は「風、石、女(海女)」というわけだ。

石というのは黒い火山石のことだ。家はもちろん畑も墓地さえも人の頭ほどの石を積み上げた塀で囲んである。飛行機で上から見たら一面に黒いステッチをかけたように見えるだろう。
海女が多いということで新鮮な海の幸、とくに名物の「太刀魚の刺身」には大いに期待していたが、この吹雪で出漁できないと聞かされがっかりした。

■「刺身を勧めてくる店もあるが、魚が古いから火を通してもらいなさいよ」
マドロスをしていたという宿の主人が流暢な日本語で教えてくれたが、刺身どころか普通の飯屋も見あたらないのには困った。
吹雪のせいか人影はなく町全体が陰気に黙り込んでいるようだ。身体中が冷えて我慢の限界にきた頃ようやく一軒だけ「食堂」の看板を掲げた店を見つけて飛び込んだ。

「さあ、早くこっちへ!あったかいからねー」
頭から雪まみれの私を見た女将がオンドルの床に座布団を置いてくれた。
「このあたりに食堂は…」と言いかけると、すかさず「無いよ!」と言って笑う。
いいんですよ、ここで熱々のスープさえ口にできれば…と言いたかった。
メニューは「キムチチゲ」と「テンジャンチゲ」の2種類だけ。この後の3日間ここで食事をすることになった。

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